現在、改正労働者派遣法が国会で審議されています。
この改正案の中に「派遣事業の健全化」というものがあります。これは現行の派遣の仕組みを大きく変えるものです。
一般?特定?派遣事業と改正案
現在派遣事業は「一般労働者派遣事業」と「特定労働者派遣事業」の二つに分かれています。現在前者は「許可制」、後者は「届出制」です。改正案ではこれらを統一し、すべて許可制にするというものです。
特定労働者派遣事業は常時雇用する労働者を派遣するもので、取得は比較的容易です。IT業界などでは届出をしてエンジニアの派遣を行うなどが一般的に行われています。
一般労働者派遣事業は「許可制」ということもあり、その許可基準のハードルは高いです。様々条件がありますが、一番大きいのは資産要件です。資産から負債を引いた基準資産額が2000万円×事業所数あること、自己名義の現金預金額が1500万円×事業所数あること等、中小規模の企業にとっては厳しい内容となっています。
法改正の影響
改正法が通過すると、特定労働者派遣事業はなくなり、すべて許可制になります。現在、特定労働者派遣を行っている会社は3年の移行猶予期間が設けられる予定ですが、詳細は未定です。許可基準の引き下げも検討されるようですがこちらも未定です。猶予期間の内に許可基準にあう体力作りが求められることになる可能性は十分にあります。また近い将来労働者派遣も考えているが許可基準に該当しない場合は今のうちに届出をするという対応も考えられます。
その他の改正点
改正労働者派遣法ではこの「派遣事業の健全化」以外にも大きな改正点があります。
「派遣労働者の雇用安定とキャリアアップ」
「労働者派遣の位置づけの明確化」
「より分かりやすい派遣期間規制への見直し」
「派遣労働者の均衡待遇の強化」
それぞれ重要です。中でも三番目の派遣期間規制の見直しは実際に大きく影響がでることが予想されています。
現在の状況
現在この改正案は衆議院を通過して、9月1日施行を目標に審議されています。経団連と日本商工会議所、経済同友会の経済3団体は、参院で審議入りした労働者派遣法改正案の早期成立を求める連名の要望書を公表しました。この法案が通らなければ「人材派遣会社や派遣社員の受け入れ企業で準備や対応が間に合わない」(経済団体幹部)などの影響が指摘されています。日本年金機構の個人情報流出問題や安保関連法案を巡る対立で、参院での審議の遅れも心配されています。
また平成27年10月1日から労働契約申込みみなし制度が施行されます。これは一定の条件を満たすと派遣先(受け入れる側)が派遣労働者を直接雇用しなければいけないというものですが、この範囲も改正法の如何で変わってきます。
労働者派遣事業は現在とても不安定な環境にあります。変遷する環境対応が求められます。