こんにちはアイリレイト社会保険労務士事務所の松本です。
労働時間の管理というと残業代の抑制が一番に浮かんできます。もちろん残業代は会社にとって率の悪い経費ということができるので少ない方がよいです。今回はこの残業代も含めた労働時間の管理について考えました。
労働時間を適切に管理する意味
労働時間の把握は労働基準法では会社の義務となっています。義務と聞くとなんだかめんどうなことに感じてしまいますが、これはとても合理的な意味があります。
労働時間は会社にとって利益を生み出す資源であって、これを管理するということは会社の利益を生み出す力を管理すると同じ意味です。働き方によっては変形労働時間制を導入したりと柔軟な労働時間の設定をする資料にもなります。
会社としては無駄な人件費ほど馬鹿らしい経費はないので残業時間をカットする必要があります、それには適切な労働時間を管理をしている必要があります。最近は固定残業制をとる会社も増えていますが、固定残業制こそ労働時間の管理が最重要な課題です。この固定残業制は法的にはかなり厳しく判断され、適切な労働時間の管理をしていない場合、裁判等では制度自体が認められないリスクが高いです。
フルタイムの社員に長時間労働をさせ残業代をさせるより、例えば人数を増やし業務を見直すことで同じかそれ以下の人件費で同じかそれ以上の効果を生み出すことは可能だと私は思います。
また社員の健康管理の面でも重要な要素と言えます。長時間労働はある意味病気と一緒です。早期に発見し予防する必要があります。週60時間以上の労働は心筋梗塞の発症率を2倍以上に高めますし、不眠やストレス性の病気の発症率も高いです。
労働時間を管理しないリスク
労働時間を適切に管理していない会社には様々なリスクがあります。
まず一番現実的なところで未払い残業のリスクです。ここ最近は未払い残業問題が社会的にも注目されていますし、労使トラブルも年々多くなってきています。仮にトラブルになった場合に会社が適切に労働時間の管理をしていないと、言われるがままに未払い残業として多額のお金を支払わないといけない可能性が高いです。
社員の疾病リスクもあります。社員の疾病について会社が安全に働かせていなかった場合、損害賠償を請求されたりした事例も多々あります。先日JR西日本の社員の損害賠償が認められ1億の支払いが命じられましたが、労働時間の管理が充分でなく安全に働かせる配慮にかけた、というのが大きな理由でした。
適切な労働時間管理は会社を守り、会社を良くする。
1日8時間、週40時間というお決まりの労働時間は工場法という労働基準法の前身からの流れを受け継いだもので、かなり古い考え方と言えます。労働時間=生産性の職場にとっては合理的なシステムでしたが、今は単純な拘束時間があっても大なり小なり裁量のある仕事が一般的です。
また社会も女性の活用、高齢者の活用と働き方が多様化してきています。1日8時間働ける人だけしか雇えない会社にはとても人が集まるとは思えません。これから深刻な労働力不足時代を迎える日本にとって人材の確保は経営上の課題になっています。短時間正社員や変形労働時間を有効に活用することが必要になります。採用活動、社員の離職防止、健康管理、人件費の抑制と会社にとってメリットは大きいです。
適切な労働時間の管理は様々な問題解決のヒントになりますし、会社の制度設計をする上でも貴重な資料になります。持続的な会社の発展にとっては切っても切り離せない重要なテーマです。