完全週休二日制、一日8時間で経営上問題がない職場には関係ありませんが実際の現場では必ずしもこの体制があっていない場合が多くあります。就業規則でとくに定めていない場合、労働基準法の原則があてはめられ1日8時間、週40時間を超えたら残業となり割増賃金を支払う必要があります。
今回は例外の「1カ月単位の変形労働時間制」について説明します。
1カ月単位の変形労働時間制とは??
この制度の目的は1カ月の間に忙しさの差がある仕事について、この原則の1日8時間、週40時間を1カ月で平均してこの範囲に収まっていれば残業にはならないということになります。
例えば月末、月初が忙しい仕事の場合、月末と月初の週だけ土曜日を出勤にして中の週は週4日の出勤にする等があります。1日の労働時間は8時間です。
1週目 月~土 出勤
2、3、4?週目 月~木 出勤
最終週 月~土 出勤
・・・普通のことに思えますよね、振替休日みたいな、でもこれは制度を採用しているかしていないかで残業かそうでないか分かれます。
これが労働基準法の怖いところで変形労働時間を採用していない場合、例え2週目~週4日勤務にしても1週目と最終週の土曜日は残業となり割増賃金を支払う必要があります。採用している場合は残業にはなりません。
働き方がまったく一緒でも残業になる場合とならない場合に分かれてしまいます。採用していない場合でこの働き方をして割増賃金を支払っていない場合、未払い残業となります。日当一万円なら割増2,500なので月に5,000円未払い残業が発生している計算になります。
分かりやすい例でしたが極端な話、月の半分一日12時間、もう半分が4時間としても残業は発生しませんし、労働日数を組み合わせることでとても柔軟な働き方の仕組みを作ることも出来ます。
採用の条件
①労使協定か就業規則等でこの制度を定める必要があります。
労使協定で採用する場合は労働基準監督署へ届け出る必要があることに注意してください。
②定めに書く必要があること
1・変形期間の長さ(1カ月以内)とその起算日
2・対象労働者の範囲
3・変形期間における各日・各週の労働時間
(4)・労使協定で採用する場合は有効期間、原則3年以内
残業になる時間とならない時間に気を付ける
1カ月単位の変形労働時間制では通常の残業と少し残業のニュアンスが違うので説明します。
・1日について・
8時間を超える時間を設定している日についてはその設定時間を超えてからが残業です。
8時間より短い時間を設定している日については8時間を超えてからが残業です。
・1週間について・特例措置対象事業については40を44に置き換えて下さい。
40時間超の時間を設定している週はその設定時間を超えてからが残業です。
40時間より短い時間を設定した週は40時間を超えてからが残業です。
・変形期間全体について(大抵は1ヵ月になると思います)
法定の労働時間総枠を超える時間が残業です。
※法定の労働時間総枠=週の法定労働時間×変形期間の暦日数÷7
※※週の法定労働時間40時間、特例措置対象事業は週44時間
法定労働時間総枠一覧(カッコ内は特例措置対象事業)
31日 177.1h(194.8h)
30日 171.4h(188.5h)
29日 165.7h(182.2h)
28日 160.0h(176.0h)
柔軟な働き方に対応する
柔軟な労働時間に対応することは今後中小企業では必須の課題になると思われます。原則の法律どおりに働いてもらうのではなく、働き方に合わせて制度をつくっていくことは会社の発展、人材確保、定着において必要なことです。今回は1カ月単位の変形労働時間を取り上げましたが、労働基準法では労働時間以外にも様々な例外が認められていています。それらを組み合わせてつくられた会社にマッチした制度は会社発展の財産になります。