私たち社会保険労務士の扱う助成金には雇用に関するもの、労働条件に関するものが多いです。
助成金は返済の必要が無いお金なので積極的に利用していきたいです。
助成金を利用するメリットとしてもちろんお金が貰える事もありますが、内容としても良いものも多く、利用しながら企業の成長の助けにもなります。
今回は助成金を貰う為の基本的な条件を説明していきます。
助成金を貰う為の条件!対象の助成金を知っておく
当り前のことと思われますが対象の助成金を知っておく必要があります。ここが一つ目のハードルです。助成金は一部(特定求職者雇用開発助成金等)を除き狙っていなかないとなかなか受給できません。
助成金のほとんどは事前に計画を出す必要があるものや、途中の経過記録が必要なものが多いので、動き出す前にしっかり調べるか、専門家に相談することをお勧めします。
本当は助成金をもらえるようなことをしているのに申請をしていない、助成金を知らなかったことでもらえないパターンは結構多いです。
日ごろから帳簿関係をしっかり整備しておく
助成金をもらう為には日々の帳面整理は欠かせません。労働に関する助成金では基本的に以下の三つはほぼ確実に必要になります。
①出勤簿(タイムカードでも可)
②賃金台帳
③労働者名簿
①の出勤簿に関しては法律で項目が定められていないので出勤を確認できるものであれば良いです。出勤日、労働時間、有給管理が出来ていれば尚良いといえます。
②の賃金台帳の必要項目は以下があります。
- 氏名
- 性別
- 賃金計算期間
- 労働日数
- 労働時間数
- 時間外労働時間数
- 休日労働時間数
- 深夜労働時間数
- 賃金(基本給、各種手当)
- 賃金を控除している場合はその項目と額
賃金台帳は記入項目が多く、必要な記載の無いものを見る事が多くあります。この台帳は確実に見られますのでしっかりと整備する必要があります。
余談ですが以前、労働日数と労働時間が記入されていない賃金台帳があり、出勤簿にはそれらの項目があったので、助成金センターに「賃金台帳に未記載項目が確認できる資料を添付して提出で良いですか」と質問したことがあります。答えは「no」でした。一連の様式で全て網羅されていないものは受け付けないとのことです。
③の労働者名簿の必要項目は以下があります。
- 氏名
- 性別
- 生年月日
- 現住所
- 履歴
- 雇い入れ年月日
- 退職(解雇、死亡を含む)年月日とその理由
- 従事する業務の種類※30人以上の事業所の場合のみ
労働者名簿はこれらが分かればよいので一覧で作成することをお勧めしています。
助成金の相談であるのがこれらの帳簿を助成金がもらえるように作ってくれないか?というものがあります。
結果としてお受けする場合とお受けできかねない場合があります。お受けする場合は他の書類で実態が確認できる場合です。単純に知らなかっただけで管理されている書類があればそれを整備します。
お受けできない場合は書類で実態が確認出来ない場合です。この場合はどうしようもありません。これからきちんとしていただく以外ありません。
これらを法定帳簿といいますが、労務管理上、出勤簿と賃金台帳は助成金の為だけでなく会社の状態を知るうえで貴重な資源なのでしっかり整備していきましょう。
助成金と言えば就業規則
前述しました法定帳簿以外に最近の助成金は就業規則の変更を伴うものが増えています。
就業規則の作成義務は10人以上従業員のいるところですが、10人未満の会社でも作成をお勧めしています。
これが無い為に助成金を受けれないというパターンはとても多いです。10人未満の会社こそ助成金は必要と思うのですが、助成金の為だけに就業規則をつくるのではなく、これをきっかけにしっかりとつくっていただきたいです。近年は労使トラブルが多発しており社会もとても敏感です。
一昔前は「社員が10人になったらつくるもの」でしたが最近では「社員を1人でも雇ったらつくるもの」に変化しています。日本もアメリカのような訴訟社会に近づいているのは間違いないので。
もらえる助成金はどんどんもらう
助成金をもらう条件がしっかりしていたら大抵の助成金には対応できます。法定3帳簿+就業規則ですね。最初に書きましたが助成金は返済不要のお金ですので経営にとって非常に有効です。それだけでなく副産物?として(本来はこちらが優先ですが卵が先か鶏が先かの問題ですので・・)労務状況を管理でき、会社のリスク管理にも繋がります。
年度ごとに助成金の内容は変わりますが基本的な条件は変わらないので新しく助成金が出ても条件にあっていれば全部もらえる状態をつくりましょう。